~ングウェーと、私とのあいだには人種の壁がある。そしてこれも、一夜のほんの戯れだけでしょうか。
 私は、そうして右せんか左せんかと悩み、奇怪な謎を投げかけたヘミングウェー嬢の行為を思いあぐみ惑乱に悶えておりました。
 ああ、O'Grie《オーグリー》、あなたは、それからの私をお嗤《わら》いになるでしょう。暇さえあれば、留守を狙ってヘミングウェー嬢の部屋へ忍び込み、部屋に残っている薫香《かおり》に鼻をうごめかしたものです。O'Grie All is glowing, burning, trembling.
 馬鹿です。しかし天はこの馬鹿に恵み給うたのか、翌日も雨、その次も雨、しかも暴動の気配が絶えず、ときどき銃声がする。風もない、ただ雨が滝のように地を打っている。
 ところで、その日からはじまる八日のあいだが、カリーの女神を祭る精進日となるのです。
 水浴をし、あらゆる慾望を絶ち、子羊を犠牲にする。そしてもって、破壊の女神カリーをお慰め申しあげるのです。けれど、いまここでは祭典どころではない。雨に暴動、加えて湯気のようなおそろしい湿気です。
 しかしそうした時、ごろごろ懶《だる》いままに転
前へ 次へ
全22ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング