word the poet to his dear ones composed: "Hinder Bortier, it is per stages[#「Hinder Bortier, it is per stages」は斜体]. The flower of Heaven, once dreamed; now enabled[#「enabled」は斜体]. Farea tell[#「Farea tell」は斜体] happy field; where joy forever dwells. Hail quake viles[#「viles」は斜体]. Lo, unexpected tort[#「tort」は斜体]"

〔訳文〕 彼は舞台の上よりして、詩聖がその最も愛するもののために作りし章句を唱わん。――隠れたる最奥の紅玉石よ、そは凡ゆる場面にあり。天国の花よ、曽て夢みしも、今はなされたり。老いたる序詞役共は、幸ある園の事を語る。そこには、喜びとわに住むとかや。いざ、劇評家共を戦かせよ。見よ。この予期せざりし鋭さを。

 幡江は、訝しさを満面に漲らせて顔を上げ、
「これが、一体どうだと、仰言るんですの。一向に、何んでもないでは御座いませんか」
 そうは云ったが、法水の唯ならぬ気配に圧せられて、ただただ幡江は、相手の開こうとする脣を、凝視《みつ》めるばかりであった。
「所が、幡江さん、これを隠伏決闘《コンシールト・デュエル》と云うのですよ。つまり、嘲罵挑戦の意志を、反対に書き表わして、それを対敵に送るのです。然し、秘密の感受性に富んでいる人間なら、ほぼこれに傾斜体文字《イタリック》が混っている――それだけでも、妙に唆られて来るじゃありませんか。僕は散々捻った揚句に、とうとう電信符号記法《モールス・アルファベット・クリプトグラフィ》で、相手の意志を曝露する事が出来ました。大体|電信符号《モールス・アルファベット》では、Dが線一つに点二つ(―‥)なのですから、短線がT、点二つがIとすると、DはTIなり―になってしまうじゃありませんか。つまり、その筆法で、傾斜体文字《イタリック》の何処か一個所を変えて行くのですよ」
 と法水は、傾斜体文字《イタリック》の下に、すらすらその解語を書き添えて行った。
 すると、見る見る不思議な変化が現われて、はては天国が奈落と変り、その紙のあち
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