ゃくりを始め、
「オジチャン、ここ、ジャッキーちゃんのお家じゃないんだね」
「そうだよ。だが、もうじきに帰してやるからね。ときに、坊やはどこの子だね」
「お父ちゃんは、日本人でジョリジョリ屋だい」
「ジョリジョリ※[#感嘆符疑問符、1−8−78] ああ理髪屋《とこや》さんだね。で、坊やはどこで生れたんだ」
「シドニーだよ。お母ちゃんは、去年そこで死んじまったんだ。お父ちゃんは、それから兵隊附きのジョリジョリ屋になって、今度も、隊と一緒にここへ来たんだがね。それも、先週の土曜にマラリアで死んじまったよ。ボクは、宇佐美ハチロウっていうんだよ」
五歳で、この蛮地へきて孤独の身となるだけに、なかなか、ませてもいるし利発でもある。それから聴くと、父の死後はベレスフォードの家へきて、そこの、ジャッキーちゃんの遊び相手になっているというのだ。してみると、ゆうべジャッキーが壁際に寝ていたのを、キューネが見損なったわけなのである。しかし、ともかくこの子は帰さなければならない。
「オジチャン、オチッコが出たいよ」
きゅうに、ハチロウが尻をもじもじしはじめた。
「だけど、ジャッキーちゃんは海へオシッコす
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