す三国山脈を、東は法師温泉の上から西は草津の横手山の方まで狩り歩くが、野州では奥鬼怒の湯西川温泉の奥の会津境の山脈の谷合いには、甚だ数多く棲んでいる。
しかし私は、上州の熊も、野州の熊も、いずれも試味したけれど、どういう理由か、あまり賞賛し得なかった。
昔から奥利根へは、出羽の熊捕り専門猟師が、越後の駒ヶ岳、八海山、牛ヶ岳などをへて入り込んできたのであるから、私は山形県や秋田県の山々が、熊の本場であろうと考えて、一度本場の熊の肉を賞味したいと希望していたところ、今回はからずも友人からの贈りものを得て出羽と越後の国境でとれた熊の肉を、たんのうした。
野州や、上州の熊の肉に比べて、まことに本場だけのことはあると思ったのである。
狸は、わが上州に最も多く棲んでいると拙著『たぬき汁』に書いて置いた。上州でも、榛名山麓に最も多い。
近年でも、その地方の人々は、時たまたぬき汁に舌鼓をうっている。
一昨年十月のことである。戦争が、次第にはげしくなって、東京では学童を地方へ疎開させねばならぬことになった。
榛名南麓の箕輪町でも、疎開学童を受け入れることになったので、校舎の修築、炊事場の新
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