水準2−89−10]をまみ[#「まみ」に傍点]と称しているが、東京麻布の狸穴は、これをまみあな[#「まみあな」に傍点]町と唱えている。してみると、われわれの先祖は、そそっかし屋揃いで、狸と※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]を兄弟か、従兄くらいにしか考えていなかったらしい。
 動物学の方からいうと、狸は犬科に属しているけれど、※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]は貉や獺《かわうそ》と同じに、鼬鼠《いたち》科に属している。※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]は、本州、四国、九州など至るところに棲んでいて、体の長さは尾と共に六百三十ミリ内外。毛色は夏冬によって、彩を異にし、冬毛は背中に白味が多く、腹の方は黒褐色を呈し、過眼帯は黒い。爪は長く黄白色をなし、前肢の爪は殊に長大だ。
 前段に申したように地方によっては狸と混用して、狢というが体の毛の荒いのと、前肢の爪が長いのによって、はっきりと区別することができる。低い丘の横腹などに自分で穴を掘って棲んでいて、四月頃に子を産むのである。肉は脂肪を含んでやわらかく、その風味、豚に似ていると思う。

  二

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