や溝掃除であるから大したことはない。
年長の先輩は、あば辰という異名を持っていた。顔に薄い白|痙斑《あばた》が浮いているからである。若い方は、樺太と呼ばれる。樺太で土工を稼いでいたからだ。
五、六日の後には、私は一人前の立派な掃除屋さんになっていた。ある日、花柳界の真ん中にある銭湯屋から溝掃除の申し込みがあった。これは、難工事であるというので、あば辰と樺太と私と三人で出かけて行った。
この風呂屋の湯尻は、直径一尺の土管を通して、道路に沿った掘割に注いでいるのであるが途中になに物か滞って不通となって湯水が溢れ出すというのである。そこでわれらは、まず長い割り竹で土管の尻から突いてみた。だが長い土管の途中に滞った物は、なかなか頑固に頑張っていて、竹の箆などでは突き抜けそうにない。結局、土管を全部掘り返して徹底的に掃除することに方針を定めたのである。
長い土管を三区に分けて三人で一区ずつ受け持ち、せっせと掘りはじめた。私は、正午頃までに受持分を掘り終わってしまったので、表通りの路傍の石に腰かけて一服やっていると、あば辰と樺太の二人が、にこにこしながら私のところへ走ってきた。あば辰は、右
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