上等になったのではなかろうか。形は五、六寸となり丸々と肥って、魚体の光沢は若鮎のような光を持っている。
アノ匂いこそないが味は若鮎と同じである。頭も骨もやわらかくて棄てるところはない。渋味が少ないから白焼きの橙酢、カラ揚げ、椀種、味噌田楽向きにこしらえてもおいしい。白菜と合わせてチリ鍋にすれば、思わず晩酌を過ごす。
湖上で、結氷しない十二月中旬までは小舟に乗って釣るのである。竿は二間半か二間で、胴も穂先も硬いもの、道糸は秋田の十五本撚り。錘から上三、四尺は二厘柄のテグスを使い、錘は三匁の銃丸型がいい。鈎はドブ釣り用の加賀の毛鈎を四、五本つける。万事鮎のドブ釣りの仕掛けのつもりで作って、錘から上四尺くらいのところから五寸間隔に、赤い毛糸で三、四ヵ所目印をつける。これで魚の当たりを知るのである。
ほんとうに釣趣を味あうは、湖面が一杯に氷で張り詰めてからであろう。厚い氷に一尺四方くらいの穴をあけ、尻に蓆《むしろ》を敷き、傍らに石油缶を切った火鉢を置いて冬の朝、紫光の公魚を手にする興味はまことに深い。仕掛けは舟釣りの時のままで竿は穂先だけ三、四尺で充分である。目印が微かにふける。合わせる
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