いられるのであるから、魚という動物は不思議であると感心しながら、なお眺めつづけていた。ところで、魚は眼を開いたまま眠っている。開いたままであるから、眠っていても魚の眼は視力がきくものかどうか試すため、携えて行った魚鋏で、眠っている魚を挾んでみた。眼が見えれば、鋏を見て逃げだすわけであるが、鮎も※[#「魚+成」、第3水準1−94−43]も鮠もなにも知らず騒がず驚かず、静かに私らの魚鋏に挾まれてしまうのであった。
これは、たしかに眼を開いたまま熟睡していたに違いない。さらに、殖田先生の説明によると、魚は約二時間熟睡すると眼をさます。それも試験してみよう、というのである。蚊の襲撃を受けながら、夜の河原に二時間待った。十時に、再びカンテラを淵の面へ差して魚の姿を眺めると、やはり水の中層に静止している。ところで、私らはまた魚鋏を水中に入れ、魚を挾もうとすると、こんどは駄目である。逸早く鋏を見つけて、鮎も※[#「魚+成」、第3水準1−94−43]も鮠もいずれへか逃げてしまった。二時間後には、たしかに眼をさましていたのである。
そこで考えたのであるが、人間が魚と同じように眼を開いたまま眠っている
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