とすれば、随分薄気味悪いと思う。自分の寝姿は見えないけれど、私などこの頃あまりのめないために、酒精失調とでもいう病気にかかり、眼を開いたまま眠るか、どうか。
 鮎、鯰、鯛、鮪、秋刀魚など多くの魚が、眠っても眼を閉じないのは、※[#「目+険のつくり」、第4水準2−82−3]が動かぬためであると思う。しかし、全部の魚の※[#「目+険のつくり」、第4水準2−82−3]が動かぬわけでもない。私の知っているところでは、二、三の魚が※[#「目+険のつくり」、第4水準2−82−3]を閉じる。
 日本のどこでもの海岸の浅い砂浜や叢《くさむら》に棲んでいる飛|沙魚《はぜ》と、九州有明湾や豊前豊後の海岸にいる睦五郎《むつごろう》と、誰にもおなじみの鰒《ふぐ》である。
 東京近くでは、千葉県の西端の浦安海岸に飛沙魚はいくらでもいる。退潮時に浜を覗くと干潟の泥のなかに群れをなして遊んでいるが、人間が近づくと、ぴょんぴょん跳ねながら逃げだす。そして、葭や葦などに這い上がり、ちょいと人間の方を振り向き、胸鰭をあげて額に翳《かざ》し、※[#「目+険のつくり」、第4水準2−82−3]をぱちぱちさせる顔は、ひどく愛嬌た
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