つけ替える。
さて、狙い場所だ。川へ遡り込んできた鱸は、海にいるときと同じように甚だ貪食だ。真冬の間は、深い淵や瀞にひそんでいるけれど、それでも餌を追うことを忘れない。だが、午後四時頃からが彼等の活動の時間である。真夏の陽が、西の地平線へ一丈ばかりのところへ近づいてくると、鱸はそろそろ浅場へ泳ぎだしてきて、餌である蝦や小魚を追いまわすのである。もし、浅場の水面を蝦や小魚が跳ね上がって、小刻みに逃げる動作を見たならば、その辺には必ず鱸が餌を漁《あさ》っているものと考えてよろしい。
しかし、鱸が最も好んで泳ぎまわる場所は、瀬の落ち込みから下流だ。つまり、そこには小魚や蝦が集まっているからだ。落ち込みから下の流速が速く、しかもまだ陽が高かったならば三匁くらいの錘を餌から四|尋《ひろ》くらいの上方の道糸につけて置くのだ。そして、竿を落ち込みの上手の瀬の真ん中へさし込むのである。竿は、瀬の中へ真っ直ぐに立った。それから長さ二十間の道糸をそろそろと流してやる。餌が落ち込みの下手にまで達するような位置に竿をさすのがよろしいのである。
その付近に鱸が泳いでいれば直ぐ食いつく。待ったなしに食い込ん
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