てみなかったほどはげしくなった。そのために、いつの間にか家内は病魔を征服して、細い骨に肉がまるまるとついてきて、三、四年前とは見違えるように健康の体格となったのである。
みゑ子が五歳、千鶴子が四歳のとき、家内はある日、心配そうな表情して、わたしこのごろ何ですか変なの。下腹に癌のようなかたまりができて、それが動くような気もしますわ。病気じゃないでしょうか? わたしひょっとすると妊娠じゃないかと思うのですけれど――と、私に妙なことを訴えた。
おいおい、馬鹿なことを申せ。お前が、妊娠などするものか。とんでもない話だ。だが妊娠でないとすると、下腹の膨れものとあっては重大事だぞ。世にいう血塊というやつかも知れない。早く、婦人科の医者のところへ飛んで行って[#「飛んで行って」は底本では「飛んで行った」]診て貰え。こんな風に私は笑いながら家内をおどかした。家内は、血相変えて医者のところへ走って行った。診て貰うと家内が予感していた通り、立派な妊娠であるときかされたのである。私も家内も狐に摘まれたような気持ちがした。
一度口あけがあると、それから続々産まれた。長男についで女の子、三人目がまた男の子
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