佐藤の家へ貰ってしまう、という相談をきめたのです。姉夫婦が、こちらの希望を容れてくれれば、その結果を兄さん夫婦に報告して承認を求めればよろしい。もし、兄さん夫婦がこのことに反対であれば、その趣を京都へ言ってやれば、それで済む。他人ではないのであるから、義兄はわたしら父妹の僭越なやり方や、破談のことなど憤りはしないと思いました。
そこで、善は急げということになり先日東京を素通りして京都へ参り、姉夫婦にこのことを率直に打ち明けたところ、案のじょう直ぐ承諾してくれました。そのとき義兄が申すに、当方には丈夫の子供が三人もいる。だから、これから産まれる子供の一人ぐらいは問題ではない。
しかし、わが子を佐藤家の嗣子《しし》として贈るとすれば、直接その子を育てる者は佐藤の嫁さんである。その、嫁さんの人柄によって子が幸福にも、不幸にもなるものだ。だから、自分は佐藤の嫁さんの人柄が心配になる。だが、佐藤の嫁さんにはまだ初対面をしていないのであるから、この際一度会っておきたいと思う。そして、安心しておきたいと思う。
こんな風に快い返事をしてくれましたと、くどくどと述べてから妹は、私の妻の方へ顔を向け
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