濁酒を恋う
佐藤垢石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)大袈裟《おおげさ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎日|炉傍《ろばた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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遠からず酒の小売値段は、いままでの倍額となるらしい。つまり、一升三円であったものが六円ということになるのだろう。
だから、晩酌を二合ずつやった者は、一合にへらさなければ勘定が合わなくなる。私など、それで辛抱するよりほかに致し方がないと観念している。
ところが、私の友人にそんな簡単にあきらめられるものではない、と言うのがいる。自分は酒を飲むのが楽しみで毎日仕事をしているようなものだ。だのに、その酒を次第々々に減らさなければならないとあっては、仕事がやれなくなる。仕事がやれなければ、結局餓死するばかりだ。しかし、相場が自然に高くなって行くのに、どこへ苦情の持って行きようもない、と言って毎日しおれているのだ。
そこで友人は、この正月を控えて、四斗樽一本を工面した。まず、大袈裟《おおげさ》に言うと酒の買い占めだ。小売
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