かは、いまのところ何とも見当がつかないようである。しかしながら、博覧会が開設されるとしたら、芝公園が最適の敷地と思う。由来博覧会の出品物は、潤いに乏しい無味乾燥な科学品の多いのを例とする。ところが、芝公園の杜《もり》の中に蒼然と古典を語る霊廟を、そのまま博覧会に出品物として内外人の眼に展したなら、これほど深い意味を生ずるものは他にあるまい。
 春近し。永き日の光る風を浴びて、三緑山の老松の下に徳川初期の偉大なる統治の力と、燗熟した芸術の滋味を偲ぼうではないか[#「偲ぼうではないか」は底本では「偲ばうではないか」]。[#地付き](一三・二・八)



底本:「完本 たぬき汁」つり人ノベルズ、つり人社
   1993(平成5)年2月10日第1刷発行
底本の親本:「随筆たぬき汁」白鴎社
   1953(昭和28)年10月発行
※<>で示された編集部注は除きました。
※「三縁山」と「三緑山」の混在は底本通りにしました。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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