大きい。また、芝川上流にある静岡県の養鱒場は、釣り人の一度は視察しておくべきところであろう。
信州の梓《あずさ》川は、岩魚の釣り場としてあまりにも有名である。それだけに四、五年前に比べると、魚の数は減った。奥飛騨の高原川の上流は笠ヶ岳近くで蒲田川となる。この雪を孕《はら》んだ渓谷には、まだ人の姿を見たことのない岩魚がいる。黒部川も岩魚の産地だ。しかし、近年は五色原の方まで分け入らなければ、一日に一貫目とは釣れないようになった。
神通川の上流は、裏飛騨へ入って宮川という。高山から飛越国境の蟹寺までの間、二十里ばかり、宮川は奔馬《ほんば》のように急勾配の渓底を駆け下《くだ》っている。恐ろしいほど荒い川である。この川の、巣の内と打保の間の激湍《げきたん》で釣れる尺鮎は全国的に有名だが、この川に注ぐ多くの渓流に岩魚釣りの処女地が無数にあるのは、あまり知られていない。
いったい裏飛騨の漁師は、岩魚を釣っても売り場がないから糧《かて》に代えるわけにいかぬ。そこで岩魚や山女魚は顧《かえり》みないのである。一両年前から飛越線が通じて旅行者が訪れるようになったが、八月から九月へかけては鮎の友釣りに
前へ
次へ
全21ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング