うだそうである。利根川では岩本から上流ならば、どこでも山女魚の釣れる所では、大抵はやが釣れるのである。もうこの辺になると、暑中でも水温が低いから下流では食えないはやも相当の味に食えるのである。
水上温泉の旅館と、駅売りの弁当では、はやの焼き枯らしを、煮びたしにして客に出したところが、大そう歓迎されたのである。しかし、そう[#「そう」は底本では「さう」]沢山はとれない。そこで苦し紛れに信州から養殖のはやを取り寄せ、利根で釣れたのですといって誤魔化《ごまか》したところ、蛹《さなぎ》臭いので直ぐ化けの皮が現われたという話である。
越後の魚野川は、雪の山から出てくるのであるから、小出町付近で釣れる大鮎はさぞかしと思われるが、大したものではない。地盤の構成によって、川床に敷く石が小さいためもあろうが、水温が非常に高いので硬いのである。また、鮎特有のアノ香気が薄い。
越中国の神通川の上流、裏飛騨の宮川の大鮎は、土地の人の自慢の一つであるが、水温と水質の関係で、皮がこわく、骨が硬かったのである。この川に大きなはやが数多く棲んでいた。巣の内の宿で出してくれたが、味は上等とは思えなかった。この魚を
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