飛越線の鉄道工事に雇われている鮮人の細君が、川の浅い所へ伏せ※[#「竹かんむり/奴」、第4水準2−83−37]《ど》を置いて漁《と》っているのを見たが、鮮人の婦人は何でもやるものだと思ったものである。
ところが、表日本の長良川の上流、上の保川や吉田川、飛騨川(越中にも飛騨川というのがある)の鮎は水温が低いので、上等の食味を持っているのである。これらの川の岩質が、鮎の好きな上質の水垢を発生させるのに、適しているからであろう。
越後の海へ注ぐ阿賀の川の支流、只見川も鮎では有名な川である。宮川のそれよりも一層こわく、肉がやわらかである。殊にアノ香気と風味を、全く持っていない。名前倒れの川であることを我々釣り仲間が行って知ったのである。やはりこれも、水温が高いのと、川底が平凡であるからである。
川は小さいといいながら興津川の鮎が尊ばれるのは、このせいであろう。
こんな、取りとめもないことを書いて、学者や、物識る人に笑われるであろうか。
底本:「垢石釣り随筆」つり人ノベルズ、つり人社
1992(平成4)年9月10日第1刷発行
底本の親本:「釣随筆」市民文庫、河出書房
1
前へ
次へ
全13ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング