七、八寸の大型の鮒だ。続いてまた当たりだ。
 こうして、鮒を一貫目近くも釣ったと言うのである。
『お前は、面白い餌を発見したな』
『うん』
 小伜は、甚だ得意だ。
 そこで、私は考えた。鮒が好んで食う餌ならば、はや[#「はや」に傍点]も食わぬというわけはない。新餌というものは、どの魚からも歓迎されるものだと気付いたのである。
 その翌朝早く起きて、畑から数多い桑の虫を捕ってきた。折りから日曜日であったので、小伜を伴って、利根川の備前堀淵へ行った。いつも山ぶどうの虫や、蛆《うじ》を餌にしてはや[#「はや」に傍点]を釣るのであるけれど、この朝は桑の虫だけを餌につけたところ、はや[#「はや」に傍点]の嗜好に適したか、素晴らしい大漁をした。伜に、はや[#「はや」に傍点]の脈釣りの鈎合わせの呼吸を伝授したのも、このときであった。伜はこのごろ、はや[#「はや」に傍点]釣りには一人前の腕になっている。
 そんなことがあってから、今度は笹の葉の虫を使ってはや[#「はや」に傍点]釣りを試みた。これも、甚だ成績がよろしい。笹の葉の虫は、笹の葉を筒に巻いて糸で絡げ、なかに棲んでいる。やはり、桑の葉の虫と同じ
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