をうたうと考へたのだが諸君はどうぢや。
 これをきいて、河童連中膜のある青色の掌を拍つて妙案々々と叫んだぢやないか。
 欧洲の河童も、中央亜細亜の河童も、支那の河童も、日本の河童もすべて馬肉を好む。猫万どんのところの小馬が狙はれてゐるとは物騒千万。猫万どんといふのは、猫背で背中に円い座布団を背負つてゐるやうな恰好をしてゐる万吉老人であるから、猫万どんと呼ぶのである。
 俺は、これは大変ぢやと思つた。それから直ぐ村へ走つて帰つて、河童の申し合せの一部始終を猫万どんに語つてきかせた。猫万老は、顔を蒼くして驚いた。実はこの馬、奥州の方からやつてきた博労に大枚七十両がところ払つて買つた小馬だ。それを源景寺渕の河童共の、酒の肴に盗まれてしまつては、吾が家は破産だ。と、泪を流すから、万さんよ、狼狽するなよ。河童などに大切な馬を盗まれて堪るものか。
 幸ひあの河童めらは酒が好きだから、焼酎の五六升も買つて置いて、夜半にやつてきたら、たらふく呑ませて脚腰の立たぬやうにしてやるがよい。そして、河童めを一匹虜にして置いて、それを香具師《やし》に売れば却つて儲かるちうものだ。
 さうかい、それは妙案だという
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