、いやこれは、正真の猫肉じゃ。猫肉は、犬の肉のように闇赤色に濁って、下品ではない。恰も、若鶏の如くやわらかく白く澄み、風味たとうべからずであるから、食べてみてから文句をいい給え。
さようか、分かった。しかし若鶏の肉にも似ているが、鰒《ふぐ》の刺身のようでもあるのう、貴公はもう試食済みか。いや、試食どころではない、常食にしちょる。猫肉は、精気を育み体欲を進め、血行を滑らかにすると、ある本に書いてあったから、先年来密かに用いたところ、なるほど本の通りであった。
試みに、わが輩の顔の色沢を見給え、青年からさらに遡り童顔に等しかろう。どうじゃ、わが輩の腕の筋肉の盛り上がりよう。
ところで貴公、貴公は先年来、猫を常食にしているというが、いままでに何頭ほど食ったかな、三十数頭。よう食ったものじゃ。してみると、貴公は猫捕りの名人ちうことになるな。
それほどのことはないがね。
そこで、友達甲斐に一番猫捕りの秘法を伝授してくれまいか、決して、他人には口外せぬことにするから。
秘法伝授というほど、こみ入った術はいらぬのだけれど、まず猫の習性をよく研究するがよい。君は、知っちょるか知れないが、猫
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