みやこ鳥
佐藤垢石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)龜清《かめせい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)浜町|河岸《かし》まで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ゆりかもめ[#「ゆりかもめ」に傍点]
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一
この正月の、西北の風が吹くある寒い朝、ちょっとした用事があって、両国橋を西から東へわたったことがあった。
橋のたもとから十五、六歩足を運んだ時、ふと水の上へ眼をやった。すると、大川と神田川が合流する柳橋の龜清《かめせい》の石垣の下の静かな波の上に、白いものが浮いているのを見た。私は、欄干《らんかん》によりかかって、しばらくそれに眺め入った。白いものは、かもめであった。
十数羽のかもめの群れは、思い思いの方へ向いて、眠ってでもいるように緩やかにうねる水にゆらゆらと揺られている。ところが、大きなかもめの群れのなかに形の小さいゆりかもめ[#「ゆりかもめ」に傍点]が、薄くれないの嘴をときどき私の方へ向けるのを、眼にとめた。
――みやこ鳥――
私は、ほんとうに偶然、途上で昔の友に行きあった
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