州、台湾の方まで渡ってくる。支那の空へも飛んで行く。夏羽は頭が珈琲褐色で、眼のまわりには白い輪がある。冬羽は、耳羽だけに暗褐色の斑点があって美しい。翕《きゅう》の下両覆に灰色の羽が生えていて、冬は嘴と脚が深紅の色を現わし、白い羽に対して目ざむるばかり鮮やかである。夏になると次第に紅が暗くなる。千鳥やシギと異なって指の間に膜《まく》のあるのが特徴であるそうだ。
 しかし、学術上の『みやこ鳥』は他にある。ほんとうは、ゆりかもめのみやこ鳥は俗名なのだ。そして学術上のみやこ鳥の方が一段と美しい。これは千鳥科に属していて、西伯利亜の東部からカムチャツカの方にわたって分布し、日本ではかつて千島、北海道、本州、四国、九州、台湾の方まで飛んできたが、近年では朝鮮の一部に見るだけとなったそうである。翼の長さは二百二十五ミリで[#「二百二十五ミリで」は底本では「二百二十五センチで」]嘴峯《しほう》は九十五ミリに突き出し、頭から背部と上胸部にかけ、また翼と尾の末端は黒く、そのほかは真っ白である。眼の下に白い色の小さい点が浮き出し、嘴と脚が赤く、脚の長さは五十ミリほどあって、見るからにスマートな姿をしている。
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