かも私の責任であるかのように食って掛かるのだ。
 他の友人は、自分ひとりで平らげてしまうのは冥加に尽きるとあって、三、四人の親戚を呼び集め、銀狐のすき焼きをやったそうだ。ところが、親戚の人々はただ結構なお珍しいご馳走でございますなあ、と賞めるばかりでさっぱり箸をださない。不思議に思って、自分がまず肉の一切を箸につまんで口に入れた途端、胸腑に悪臭が渦まき起こり、むっと吐き気を催したとある。
 も一人は、ある料亭へ持ち込んでいろいろと調理させたが、なんとしても、食いものにならない。ところで狐の臭気が、その後料亭のどの室へも浸みこんでいて客を苦しめ、甚だ迷惑すると尻を持ち込まれたそうだ。他の連中の報告もいずれも不評。私は竹の皮包を紛失して、ほんとうに幸運であったと思った。

     五

 狐は、事物異名考に淫婦《いんぷ》紫姑《しこ》が化けた獣であると書いてあるから人間の食いものにはなるまいが、同じ妖術を心得ている狸の方は悪意ある化け方をしない。どこか間の抜けたところがあって人からその無頓着を愛されている。だから大いに食えるだろうという友人の説である。
 そこで、一両日前会津の山奥から送っ
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