うむどん
佐藤垢石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)饂飩《うどん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)七分|搗《づ》き

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うどん[#「うどん」に傍点]
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 物が高くなって、くらしに骨が折れてきたのは私の家ばかりではあるまい。どこでも、同じであると思う。殊に、私の家庭のように田舎から出てきたものには、それが一倍身にこたえるのである。
 家内も、子供も野菜が好きだ。山国にいたころの家族は、お正月とか物日とかでなければ塩ものの魚さえも味わうことができないのであった。だから大量の野菜がなければ一日も過ごされない習慣を持っている。野菜がなによりも好物であるのは致し方がないであろう。
 ところが、このごろでは、葱が十銭に六、七本、大根が一本二十五銭、小松菜が束十三銭、八ツ頭が一箇十銭とあっては、やりきれない。家内が、お勝手で悲鳴をあげているのである。故郷にいたときは、屋敷の前の畑から、芋でも菜っ葉でも食べたいだけ取ってきたのに、このごろでは野菜を食うことは、おかねそのものを食うような
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