る工夫はございませんか。という始末で、家内には大事件となった。
なるほど、そうだのう。
そこで、私はうどんと麺包をやめさせる工夫を考えてみた。しかし、子供に家計の実体を知らすのも何だからと思って、お前たちよ、うどんも麺包も小麦粉からこしらえるのは知っているだろう。だが、いま日本にあり余るほどの小麦粉はないのだ。私が百姓している時分は、小麦は一石八、九円から十一、二円であったのが、今では二十三、四円もしている。
これは、加奈陀《かなだ》と豪州から入ってくる小麦粉に政府が高い関税をかけて防ぎとめたために、日本で耕した小麦の相場が、今のように高くなったのだけれど、それと当時に産額も増してきた。それでも相場が下がらないというのは、こんどは日本の小麦粉を外国へ輸出するようになったからで、ここでお前たちが大口あいてうどんや麺包を食べると、やはり日本の食料が減って虻蜂《あぶはち》とらずになるから、いままで通り七分|搗《づ》きばかり食べたらどうだい、といましめてみた。
家計のことから説かないで、小麦の大切なことを話したのは、あるいは顧みて他をいう類であったかも知れない。ところが、男の子の方が私
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