ます。もともと変った家庭に育った人同士が集って暮すのですから、お互に控目《ひかえめ》にするより外には仕方がないのでしょうが、思うままに振舞おうとする人が一人でもある時は、誰も彼も不平を起して、治まるはずがなくなります。
 思えば私ももう八十を過ぎて、いろいろな家庭をも見、いろいろの人にも附合って来ました。普請が出来て引越しましたら、また昔のように森家の旧宅の跡もたずねましょう。そうしたらまたいろいろと思出すことがありましょう。
[#地から1字上げ](昭和三十年十月)



底本:「鴎外の思い出」岩波文庫、岩波書店
   1999(平成11)年11月16日第1刷発行
底本の親本:「鴎外の思ひ出」八木書店
   1956(昭和31)年発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※「舎」と「舍」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:川山隆
2007年11月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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