れて、その扱いに難儀をしていられるのもあるし、残して来た先方への送金に、ひどくお困りなさる方のあることなども聞いていたものですから、それだけ心配になるのでした。
 夜更けて帰った主人に、どんな様子かと聞いて見ても、簡単に分るはずがありません。ただ好人物だというのに安心しました。事情も分ったらそれほど無理もいうまいとの話に頼みを懸けたのです。
 それから主人は、日ごとというように精養軒通いを始めました。非常に忙しい中を繰合せて行くのです。次兄はまだ学生ですし、語学も不十分です。兄は厳しい人目があります。軍服を著《き》て、役所の帰りに女に逢《あ》いには行かれません。それに較《くら》べると主人は気楽ですから、千住では頼《たよ》りにして、頻《しき》りに縋《すが》られます。父は性質として齷齪《あくせく》なさいません。どうにかなるだろうくらいの様子でしたが、母は痩せるほどの苦労をなさいました。何しろ日本の事情や森家の様子を、納得の行くように、ゆっくり話さねばなりません。かれこれする内に月も変りました。
 その頃の主人の日記に、「今日は模様|宜《よろ》し」とか、「今日はむつかし」などと書いてあります
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