まちくら》していたのですから、その年も春が過ぎてからは、その噂《うわさ》ばかりしていました。少し前に帰朝された人に、「年寄たちに様子を話して下さい」とお頼みでしたので、その方が訪ねて下すって、親切にいろいろ話して下さいました。日常生活から、部屋の様子、器具の置場などまでして話して下さるので、どんなだろうか、あんなだろうかと想像をも加えて、果《はて》がありません。
「夜帰って来て、幾階もある階段を昇るのに、長い蝋《ろう》マッチに火を附けて持ちます。それが消える頃には部屋の前に著《つ》きます」と聞いた弟は、細長い棒を持って来て、「これくらいですか」などと尋ねます。
「いいえ、そんなに長くはありません。箱をポケットに入れて、消えれば次のを擦《す》ります。どこでも擦れば附きますから、五分マッチともいいます。」
そうした話を、何んでも珍しく聞くのでした。
祖母は夫が旅で終った遠い昔を忘れないので、「旅に出た人は、その顔を見るまでは安心が出来ませんよ」といわれます。母は、「そんな縁起でもないことを仰しゃって」と、嫌《いや》な顔をなさいますが、心の中では一層心配していられるのです。親戚《しんせき
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