ません。或時父がそれを見て、全く二重ですねえ、と目を見張らせます。まあ出来上りを見て下さいと、笑ってお出《いで》です。やがて張り上げると、すっぺりして立派になるのでした。昔から何に依らず質素にと心懸けて、物を粗末にはなさいません。
 私は手紙にいろいろのことを書いては、西洋の兄へ出します。学校のこと、下宿のこと、その他さまざまです。間もなく便があって、下宿はやめるがよい、おばあ様にもお気の毒だし、女の子の下宿は好ましくない、というのです。ちょうど学期の終の時でしたから、引上げて千住へ帰りました。
 これからどうして通わせようかということになりましたが、兄の出立後は、供をしていた与吉という車夫が父のになっていました。頑丈《がんじょう》な男でしたが、年を取っており、無口で無愛想なので兄のお気に入りでした。人込《ひとごみ》だろうが、坂道だろうが、止めろ、と声を掛ければすぐ止めます。用事の外は口を開きません。それが素朴でいいとおっしゃいましたが、父の病家廻りのお供としては、先々では喜ばれませんかった。それに父の病家は近くが多く、車で行くのは田舎《いなか》ばかりですから、女の子の供にはあれがよか
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