は抜萃《ばっすい》のものばかりで、張合《はりあい》のないことでした。
 始めの下宿は二階のある家でしたが、近火《ちかび》があったので、学校に近い平家の下宿に移りました。そんな世話は皆次兄がなさいます。御自分も一緒に引越されます。引越など造作もないと思っていられます。次兄の室は別ですから、夜勉強が済んでお茶でもという時には呼んで来て、その日にあったことなどを話合います。祖母も兄の時から下宿住いには馴《な》れていられますから、苦になさいません。どこの家でも食物などは、それぞれに癖のあるもので、今晩はとろろ汁です、などといわれると困りました。私は食べたことがないものですから、箸《はし》を取りかねます。そんな日には次兄は、どこかで鮓《すし》など買って来て下さるのでした。祖母は私どもの学校の留守には、いつも裁縫をしていられます。千住から次々と仕事を持って来て、少しも手をあけてはいられません。どうかして途絶えた時には継ぎものです。古い絹の裏地など、薄切れのしたのに継《つぎ》を当てて細かに刺すのです。年寄には軽くてよい、新しい金巾《カナキン》などは若い者のにするがよい、といって、決してお使いにはなり
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