した。預け先は親類で、鉄筋コンクリートの大きな蔵でした。衣類家具類なども一緒です。
 後に残した荷物は、近辺一帯の疎開命令でしたから、家の前の往来はただ車の行列で、なかなか順が廻って来ません。やっと約束の日が来る前の晩に、巣鴨《すがも》から本郷にかけて綺麗に焼けてしまいました。翌朝になって、疎開先の目黒《めぐろ》で書入れのある本や、由緒のある本のことを思って残念がりましたが、目黒の家の上も飛行機が毎日通るのですから、ここまで持って来ても、同じ運命になるだろうとあきらめました。
 或日「それ飛行機」というので、急いで地下室に入りましたら、台所の屋根を打抜いて弾《たま》が落ちました。けれども地下室にいましたので、それほど音は聞えませんかった。棚に積重ねてあった瀬戸物類は全部粉砕しましたが、幸いにそれは不発でした。隣家の庭に落ちたのも不発でした。実弾ならば、怪我《けが》位では済まなかったでしょう。誰にも明日の事は分かりませんが、さし当り雨だけはというので、男たちは屋根に上って修繕し、私どもは瀬戸物の屑《くず》をかき寄せるのでした。
 終戦になって少し落ちついてから、荷物が返されたのを見ますと
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