たけれど、面白いとは思いません。こんな本もあると、机の上の本たての飾のつもりでいました。
 次に見せて下すったのは『宇津保《うつほ》物語』でした。これは絵入で、幾冊もあって、厚い表紙は銀泥《ぎんでい》とでもいいますか、すっかり手摺《てず》れて、模様もはっきりしません。一冊の紙数は幾らもないのでした。仮名書の本は読みつけていましたから苦になりません。家に古くからあった草双紙《くさぞうし》のどこを開けても絵があって、その絵の廻りに本文がびっしり仮名で埋めてあるのを、今頃の子供たちが新聞でも見るように読みつけていましたから。
 見せて下さる本の中には、ひどく古くて、表紙や裏表紙も破れていて、中は歌の題にふさわしい歌の言葉をいくつも並べて、さもさも続けて御覧なさいというように見えるのもありました。
「これは何という御本です」と伺ったら、「題などはどうでもいいよ。古本屋がおまけにくれたのだから」と、お兄様は笑っていられました。
 清輔《きよすけ》の『袋草紙《ふくろぞうし》』でしたか、ひどく大きい本で、中の字は荒いのです。「紙が無駄だこと」と私はつぶやきましたが、お兄様は、そこに朱でいろいろ書入れ
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