《おと》さんの不断著《ふだんぎ》を縫って見ようとなすったのです。媒妁《ばいしゃく》をして下すった夫人は社交家で、「森さんは奥さんのお扱いが下手《へた》だ」といわれましたが、世馴れた人の目からは、そう見えたのかも知れません。
「森さんはお母さんばかりか、お祖母《ばあ》さんもおありだから、お嫁さんはお骨が折れましょう」という噂を聞いて、いっこくな祖母は腹を立てて、「何も私は急に出て来たのではない。誰も始めから知っているはずだ。長命なので、人様のお邪魔になってはならぬと、小さい体をなお小さくしているのに」と泣かれます。行合せた私が慰めて、「まあまあ誰がそんなことをいったのか知りませんが、気にお懸けなさいますな。あなたは森の大事なお祖母様ですものを。それはお兄様が一番よく知っていらっしゃるから御心配ありませんよ。それよりお祖母様、今日は手製ですけれど、お好きな栗のきんとんのおみやげです。召上って下さい」といいますと、「それではお昼に戴きましょう」と御機嫌をお直しでした。家族が多ければ、それだけ事の多いのも仕方がないのでしょう。
どこの家庭でも、泣いたり笑ったりする内に、知らず知らず年月を過し
前へ
次へ
全292ページ中290ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小金井 喜美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング