と、二人の曾孫が高等学校へ入学した時でした。於菟さんを非常にかわいがっていられたのですから、分ったらさぞ喜ばれたでしょう。
 若い時から身だしなみのよい人だったそうで、老いてからも毎朝丁寧に手水《ちょうず》を使い、切下げの髪を綺麗《きれい》に撫《な》でつけて、火鉢の側にきちんと坐っていられるのでした。毛筋は細く柔かで、茶色になっていましたが、白髪は終るまで一本もないのが不思議でした。小作りな痩《や》せ形《がた》な人で、色は浅黒く、人並より鼻が高いのでした。歯は入歯でしたが、それが鉄漿《かね》でも附けたかのように真黒で、黄楊《つげ》で造らせたとのことでした。
 その切下げの髪で思出したのですが、私を毎朝小学校まで、運動がてら送って下すっていた頃、帰りに巡査が呼止めて、「いつその髪を切ったのか」といったのです。咎《とが》められたと思った祖母は腹を立てて、「ちゃんと届がしてあります。家へお出《いで》なさい、見せますから」といったら、そのまま行ってしまったとのことでした。父は笑って、「咎めたのではないでしょう。誰か親戚の人にでも髪を切らせようと思って聞いたのかも知れません」といわれました。
 
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