もにも下さいました。気を揉《も》んだ後なので、お姉え様もおいしそうに召上ります。
「赤松などではお客があっても、家内の者がお相伴《しょうばん》するのではありませんから。」
「それはお客に依り、時に依ります。どんなものでも皆で食べれば結構です。」
 そんな話が交されました。
 後になって賀古さんなどがお出になり、寒い日などでお酒が出ても、湯豆腐位でお済ませになるし、それで誰も不服らしくはありませんかった。
 お祖母様が新嫁さんが見たいと仰しゃるのはお道理と、ちょうどその頃千住にお医者の会があって、お兄様に何かお話をといわれていたので、御一緒に車を並べてお出かけでした。お医者の方々はお兄様のお話を聞くために超満員だったといいました。その頃そんな折の会場はいつも郡役所でした。お姉え様は三味線をお持ちになったのです。長唄《ながうた》の何か一くさりを弾いてお聴かせになったのでしょう。後でお医者の方たちはお兄様のお話を喜び、お姉え様の長唄を聴いた者は、その音締《ねじめ》に感じ入ったのでした。お父様お母様の御満足が思いやられます。間もなく不運なことが起ろうなどとは、誰もが思いもかけませんかった。

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