思わず笑ってしまいました。
 今度の家には弟も同居して、神田《かんだ》の学校へ通っていますし、赤松さんのお妹さんが二人、皆きれいな方でしたが、やはり来ていられます。大勢の家族ですから、部屋数はあっても、食事の時などなかなかの騒ぎです。下宿していた次兄も大抵来ていられて、夜など家人を集めて声色《こわいろ》をおつかいになります。団十郎《だんじゅうろう》がお得意でした。お兄様はお厭《いや》だろうと思いますのに、次兄はそれでも気軽にお兄様の御用をあちこちなさるので、「篤《とく》、篤」といって、御機嫌は悪くもありませんかった。
 お妹の勝子さんと仰しゃるお嬢さんは元気な方で、後からお兄様に飛びついたりなさいます。私などは幼い時から、お兄様は大切の方と、ただ敬ってばかりいるのでしたから、心の中でまあと思いましたが、お母様など、「登志子さんもあんな気風だったら」など仰しゃるのにまた驚きました。
 お客様でいつも夜が更けます。その頃西洋の詩を訳して『国民|之《の》友』へ寄せることになって、お兄様が文字と意味とをいって、それぞれにお頼みになります。中には意味だけいって、お自由にと仰しゃるのもありました。
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