売る人はその前に腰を掛けて、煙草を吸っています。立止って動かないのは女ばかりです。
 それから地面に直ぐに筵《むしろ》を敷いて、玩具《おもちゃ》類を盛上げているのもあります。
 また面白いのは虫売で、やはり小屋掛けですが、その障子は市松《いちまつ》模様に貼《は》ってあり、小さな籠《かご》が幾つともなく括《くく》りつけてありました。さまざまの虫が声を揃《そろ》えて鳴いています。野原や庭で鳴いているのは、近くへ寄っても鳴きやめるのに、雑沓《ざっとう》の中でよく鳴いていることと思います。その店にはなお、大きな籠に黒絽《くろろ》を張って、絵の具で模様を画いたのに、蛍が一杯這入っていて、その光が附いたり消えたり、瞬《またた》きするようで綺麗でした。やはり黒絽で張った小さいのが、まだ幾つも下げてありました。
 人の大勢たかっている処は見ないで行きましたが、道の傍の土の上に筵を敷いたのに小さな子を寝かして、傍に親らしいのが坐って、お辞儀をしているのがあります。子供は眠っているのか、じっとしています。「可哀そうね」といいましたら、定は笑って、「子供はどこからか借りて来たのだそうで。肥えた子は安くて、痩
前へ 次へ
全292ページ中140ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小金井 喜美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング