れて中身が離脱して了う。ヨタ本形態である。略装は近頃本を安く作る必用上、よく採用されている。が、どうも安物をつくる心得で出版者も工作者もやっつけるのでいい味のものが尠くなる。気軽で親しみ易く又読むにも軽量で扱いいい、心易い様式、好もしい姿であるのに、そうした心組で、ガラクタ本にして了う場合が多いことは遺憾である。この仮装略装本を非常に愛着して、この方式の上にいい本を作りたいといつも願っているが、前述のような事情で失望しがちである。だがこの形式は将来十分発展性のあるものと考える。愛書家も徒《いたずら》に華装ばかりを尊重したがらずに、こうした所に平明直截な美を打ち立てることに留意してほしい。
 本装は、まず本らしい。本として一人前な、制服をつけたといった所の様式である。略装の紙表紙がボール貼りに代ったものといっていい。このボールは、厚薄によって、本の味が大変違って来る。薄手のものか例えばマニラボール、芯地など用いたものは、略装の味に近くなり、心易さが増して来るし、翻読にもおっくうな気持が来ない。ポケット辞書類が大抵この薄表紙であるのはその間の性質の自然な利用である。又その逆に極端に厚いもの
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