ためである。紙の折都合よりももっと別の形、当然の形より変えたい場合には、非常に舌を片よって多く出したりする。それだけでみると随分変な奇態な外観を呈している。仮装は、巷間之をフランス装という程、フランスの本は仮装が多い。仏蘭西では所蔵家が自らさせる所蔵装綴が普及発達しているし、又自ら手がけて装本をたのしむの、彼国の美術心の発達によるものと云えよう。日本の仮装は一般に相当親切に綴じられているが本場の仮装の綴じは各詮自性、ただ散り散りにならぬ程度のぐたぐたなものが多い。由来から考えればそれでいいわけであって、かかる本は、再読三読するためには本装をしなければならない。フランス装の名が出来ているだけあって日本の本は仮綴でも相当丁寧にかがられているし、小口などもよくそろえてあるもの少くない。蓋し日本のように再製製本が大部分崩れた本の作りなおしやノートの合冊位にしか用いられぬ習慣や、又芸術的な製本をやる製本業が全く発達していない現状ではこうしたことも一方法であり、仮装も立派に一装本形態として独立性を多分に持って来るわけである。この仮装を、その観念を更に一層徹底させて、上被も用意せず、糸も通さない出版
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