匠を施すべき範囲が甚だ狭い。つまり和装本の形式は、丁度和服が殆ど手のつける余地のない程、完成し切った形体であると同じである。現在公刊本に此の和装の形式が変形乍ら用いられるのは、僅に箱だ。即ち、題貼り形式がそれである。稀に数奇を好んで本にも之が用いられるが、木に竹をついだ感じでおちつけない。
折本仕立に至っては画帖、書帖の類の外は殆どないといってもいい位だ。であるから、この記述では和本仕立の装綴については之を省いて触れることをしない。
現在行われている洋式装本をみるに大別して三種である。即ち、略装、本装、華装だ。猶、この外に仮装を分ける方がいい。これは略装に含ませてもいいが、観念が別の所から出発するから分ける方が正しい。
仮装は、ただ糸かがりをし、簡単な上被で之を覆い、綴じ放しの截ち切らず、即ちアンカットが常道である。時にしゃれて、又は特に形を特別なものにするためには截たれるが、三方折り放しのままが本然の姿だ。之はつまり、読者が自分の好みに本装をするために用意された形式であって、刊行者は中味だけを提供するというわけ。之を截たないのは、本装の折に截断によって本が小形になることを忌む
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