かわ》らず、彼の軌道が放物線をしておるので、どこへ行くやらも解らぬ、故に吾々はまず何とかして彗星迄行って、それから先き、他の世界へ飛び移ろうではないか、これ彗星が久しき間、吾々から厄介者にされていた酬《むくい》故、彼も必ず好意を以て応援してくれるに相違ない」
と彼は滔々として、自己の想像説を弁じ立てたが、殺気立てる聴衆は、却って大いに憤慨して、この空想家を演壇から撃退して仕舞った。
するとさらにこれに代って立ち現れたる一人は、大声疾呼「驚くなかれ諸君よ」の冒頭を以て、まず聴衆の鼓膜を破ったのである、彼は狂せんとする人々を押し静めて、さて説いて曰く、
「諸君! 君らは何の故を以て、物々しく悲観し給うか、僕は寧《むし》ろ諸君の迂《う》を笑いたいと思う、かくいわば君達は例に依って僕を攻撃なさるかと存ずるが、僕はまた僕だけに自信がある、君達も疾《とっ》くに御承知であろう、かのアルキメヂスという男は、槓杆《てこ》を以て地球を動かすと断言したではないか、しかもそれは遠い昔しの事だ、昔しの人でさえ地球を動かすといったのに、今文明の恵みの光に浴する僕らが力を以てするからには、ただに地球を動かすに止
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