帰するのである!
 かの天に夜毎清麗なる光を恣《ほしいまま》にする月は、由来我地球の分身にして、しかも地球よりも早く死滅したる一世界である、汝《なんじ》に出ずるものは汝に帰るとかや、かの月は、やがて我地球と衝突して、二体同一となるのであるが、その時は我世界の破壊時にして、何物の生者をも存在せしめない。
 死せる地球、及び他の惑星は、瀕死の太陽を囲繞して、暫しは哀れを止むるが、その太陽が中心迄、冷えきった時は、宇宙の一辺には、偉大なる怪球どもの残骸が横たわって、見るも無慚なる有様となる」
 時に一人は叫んだ。
「君よ、太陽系はかくのごとくして全く滅亡に帰し、再びその生を回復し能わぬか」
 彼は殆《ほとん》ど絶望の涙を湛えて、弁士の確答を促したのであった。
「憂うるなかれ、宇宙の万物は、すべて流転輪廻の法則の下に存在するのである、即ち滅亡せる太陽系統は、或る時機に於て、必ず復活すべきことは、何人といえども否定し得ないであろう、君よ今まさに滅亡せんとする我世界は、悠久の過去に於て、すでに幾度も生滅を繰返したのである」
 彼はかく述ぶるとともに、暫時その咽喉《のど》を湿《うるお》すべく、冷水の
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