もの一人もなく、等しく自己の生命を全うして、未来の安楽を希《こいねが》うものばかりである。
 同盟会の一人は、さらに語を続けて述べていうよう。
「かの高熱度を有する火の玉、すなわち一団の大|瓦斯《ガス》塊は、自ら非常なる速度を有して宇宙の一辺に回転しつつある内、その外側に当ってさらに一大輪を生じたのである」
 この時一人の弁士はこれを反駁して曰く、
「否々、我世界は、由来神の創意に依って出来たのである、瓦斯球が回転しているなどとは真赤な嘘でござる、もし君のいうごとくならば、その瓦斯体なるものは、どういう理由で出来たか、ただ訳もなく出来るはずはござらぬ、何としてもこれは神、即ち造物主の創造に帰するの外はない、如何にというに、神は吾人の想像し得ぬ永劫の昔から在ったものではないか」
 と、これは保守党の弁論で、大分ノーノーと呼ぶ声もあった、すると先の一人はこれを反駁するために、
「暫く清聴せられよ、もし君のいわるる通り、造物主の創意になったものとすれば、今回のごとき、恐怖時代があろうはずはない、神は蒼生を憫《あわれ》みこそすれ、これを滅亡して快とするような了見の狭い者では有るまい」
 謹聴謹
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