器や壺鉢の類や土偶や土製の飾玉や小版抔の製造或は用法迄も全く失ひ其言ひ傳へを全く忘れて妄説を稱べるとは甚信じ難い事では有りませんか夫よりはコロボックル[#「コロボックル」に傍線]が住んだと云ふを信ずる方が當然と考へます北海道にアイノ[#「アイノ」に傍線]ならざる人民が居たとすれば渡瀬庄三郎氏の述べられた手宮の彫刻(報告第一卷第八ページ)田内捨六氏の發見されたヲシヨロ[#「ヲシヨロ」に二重傍線]の環状石籬(報告第一卷第三十ページ)莊司平吉氏の採集された異樣の文字ある器物抔も説明が付き易いでは有りませんか
コロボックル[#「コロボックル」に傍線]説は未だ証據だてられたのでは有りません只實らしく思はるると云ふばかりです夫故に此事を明にするは甚面白い事で先づ貝塚及び貝塚より出づる諸種の遺物を研究して當時生活の有樣を考へアイノ[#「アイノ」に傍線]の性質風俗習慣[#「習慣」は底本では「習貫」]を詳にして甞て貝塚及び貝塚より出づる如き物品を製造した痕跡が有るか無いかを慥め貝塚や其中に有る樣な器物の出づる遺跡は北方何所迄有るかを極め今尚是等を作り或は甞て作たと思はるる人民が居るかどうかを探り尋ぬるのが肝要な事で有りまする
近年シャムシュ[#「シャムシュ」に二重傍線]からシコタン[#「シコタン」に二重傍線]へ移した土人は丈が五尺以下で色が白く女は束髮で手に入墨をして居り衣服は男女共にロシヤ[#「ロシヤ」に二重傍線]風の洋服で有るが住居は竪穴で有るとの事です丈の短いのと竪穴に住むのとはコロボックル[#「コロボックル」に傍線]に付た口碑に合ひますから細考すべき事と思ひます(MS君はコロボは小と云ふ義と記されましたがチャンバアレーン[#「チャンバアレーン」に傍線]氏の著されたメモアー[#「メモアー」に傍線])にはコロは蕗の義と有ります去らばコロボクグル[#「コロボクグル」に傍線]或はコロボックル[#「コロボックル」に傍線]とは蕗の下の人と云ふ意でござります報告第十一號に載せた廣澤安住氏の寄書に童人種と有るも此土人の事でせうが其記事中に「陶器ナドノ如キ今アイノ[#「アイノ」に傍線]ニハ造リ得ザレトモ童人種ハ却テ之ヲ能ク成セリ」と有るは實に研究すべき事で有りまする
身現に北海道に在り或は甞て彼地に趣いてアイノ[#「アイノ」に傍線]若くはシャムシュ[#「シャムシュ」に傍線]土人に接したる人々は
前へ 次へ
全5ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坪井 正五郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング