部に布目《ぬのめ》の痕を付けたり是等の遮光器は左右兩端《さいうりやうはし》に在る紐を以て頭に結《むす》び付けられたるものの如し。之を用ゐしは男子《だんし》ならん。そは此所に述《の》べたる如き面貌の土偶は乳房《ちぶさ》の部の膨れ方|甚《はなはだ》少《すくな》きを以て察《さつ》すべし。光線反射の眼に害有る男女《なんによ》に從つて差有るの理《り》無《な》し。女子は如何《いか》にして眼を保護《ほご》せしや。今後女子にして遮光器《しやくわうき》を着けるが如き形の土偶|發見《はつけん》さるる事有るやも知らざれど、余は前項《ぜんかう》の覆面が充分《じうぶん》遮光器の用を爲せしならんと考《かんが》ふるなり。覆面の眼の部には小き孔ありて此所《ここ》より外を見たりとすれば、光線《くわうせん》の反射が甚く眼を害《がい》する事は無《な》かりしならん。
未開人民《みかいじんみん》の現状に由つて考ふれば遮光器の必要《ひつえう》は積雪《せきせつ》多き時に於て殊に深く感《かん》ずるものの如し。余《よ》は既に頭巾と覆面《ふくめん》との事に付きて言ひしが如く遮光器の存在《そんざい》に關しても當時《たうじ》の氣候《きかう》
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