このきい》なる面貌は何を示したるものなるか。未開人民《みかいじんみん》の現状を調査《てうさ》すれば大に發明《はつめい》する所有るなり。シベリヤ東北の住民《ぢうみん》、アメリカ極北の住民及びグリーンランドのエスキモは眼の部分《ぶぶん》に細き横線を截り透かしたる眼蔓樣のものを用《もち》ゐる事有り。是太陽の光線《くわうせん》が積雪の表面或は海水の表面《へうめん》より反射し來つて眼を害《がい》するを豫防せんが爲なり。其原料《そのげんれう》には獸の皮と木との別あれど余は是等《これとふ》を總稱して遮光器《しやくわうき》と言ふ。奇異なる面貌の土偶は疑《うたが》ひも無く遮光器を着けたる形なり。輪廓《りんかく》は遮光器の周縁《しうゑん》にして、横線は透かしなるのみ。コロボツクルの用ゐたる遮光器の原料《げんれう》は何なりしや、明言《めいげん》し難けれど面の彎曲に適《かな》ふ樣に作られたると、橢圓形《だゑんけい》の部の周縁に縫《ぬ》ひ目《め》の如き凹みの存するとの二つに由つて考《かんが》ふれば恐《おそら》くは獸の皮なりしならんと思はる縁の部のみは布《ぬの》にて作りしものも有りしにや、第二例に於《おい》ては此
前へ
次へ
全109ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坪井 正五郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング