はた》して衣服を着《つけ》ざる者有りとせばアイヌは實《じつ》に其|無作法《ぶさはふ》に驚《おどろ》きしならん。氣候の寒暖《かんだん》は衣服の有無を决定《けつてい》するものに非《あら》ず。テラデルフユウゴの住民は寒地に在りても裸体《らたい》にて生活す。彼のエスキモを見よ屋外に出《い》づるには温き衣服《いふく》を纒《まと》へども屋内に入れば男女の別《べつ》無く屡ば裸体となるに非《あら》ずや。生來の習慣と住居の搆造《こうぞう》とは寒地人民の裸体を許すものなり。習慣《しうくわん》を異にし住居を異にするアイヌとコロボツクルが裸体《らたい》に對《たい》する考へを等しうせざるは怪《あやし》むに足らず[#「足らず」は底本では「足らす」]。余はコロボツクルは衣服《いふく》を有《いう》すれど時《とき》としては屋内抔[#「屋内抔」は底本では「屋内坏」]にて之を脱ぐ事有りしならんと想像《そうぞう》す。以上は口碑に重《をも》きを置《を》きての説なり。之を土偶《どぐう》に徴するに、裸体のもの有《あ》り、着服のもの有りて前述《ぜんじゆつ》の諸事中|甚《はなはだ》しき誤無きを證す。
股引[#「股引」に白丸傍点] 土偶
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