日本諸地方に廣がり居りしが、後《のち》にはアイヌ或は日本人の爲に北海道の地に追ひ込まれ、最後《さいご》にアイヌの爲に北海道の地より更《さら》に北方に追ひ遣られたるならんと考へらるアイヌとはコロボックルと曾《かつ》て平和の交際《かうえき》をも[#「交際《かうえき》をも」はママ]爲したりしと云ふに如何《いか》にして、不和《ふわ》を生じて相別かるるに至りしか。固より詳知し難《かた》しと雖とも、口碑に隨へば、或時コロボックルの女子貿易の爲アイヌの小屋の傍に行《ゆ》きしに、アイヌ共此女を捕《とら》へて内に引き入れ、其の手の入れ墨《ずみ》を見んとて、強《し》ゐて抑留せし事有るに原因すとの事なり。(第一回參照)此事は今の十勝《とかち》の地に於て起《お》こりし事なりと云ふ。
終りに臨《のぞ》んで讀者諸君に一言す。余は以上の風俗考を以て自ら滿足《まんぞく》する者に非ず、尚ほ多くの事實を蒐集總括して更に精しき風俗考を著《あらは》さんとは余《よ》の平常の望《のぞ》みなり。日本石器時代の研究は啻《ただ》に日本の地に於《お》ける古事を明かにする力を有するのみならず人類學《じんるゐがく》に益を與ふる事も亦極めて大
前へ 次へ
全109ページ中107ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坪井 正五郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング