るべけれど、他の貝類を採集《さいしう》するには、袋或は籠《かご》の如き入れ物さへ有れば事足りしならん。袋には粗布《そふ》を縫《ぬ》ひ合《あ》はせ作りしも有るべく、目を細《ほそ》くせし網も有るべし。コロボックルが粗布をも作り網をも作《つく》りし事は、前にも述《の》べ置《お》きし通り慥《たしか》なる證有る事なり。籠の事も既に記せし故此所には再説せず。
植物性食物採集の爲には諸種《しよしゆ》の石器及び入れ物を要せしなるべけれど、何物《なにもの》の如何なる部分が食料《しよくれう》に撰まれしや詳ならざるを以て、精細《せいさい》には記し難し。
    ○製造
コロボックルの知《し》り居りし製造業《せいぞうげう》を列擧《れつきよ》すれは左の如し。
石器製造。(第六回、打製《うちせい》類及び磨《みかき》製類|考説《こうせつ》の末文等を見よ。)
骨器製造。(第七回、角器《かくき》牙器考説の終りを見よ。)
角器製造。(同前。)
牙器製造。(同前。)
土器製造。(第七回、容器考説《ようきかうせつ》の中程《なかほど》を見よ。)
貝器製造。(第七回、貝殼器《かいがらき》考説の末を見よ。)
籠類製造。(第七回、植物《ちよくぶつ》質器具考説を見よ。)
網代類製造。(同前。)
席類製造。(同前。)
糸紐製造。(同前。又同回、糸掛《いとか》け石《いし》の條を見よ。)
布類製造。(同前。又第二回、衣服原料《いふくげんれう》の條を見よ。)
此他|漆液《しつえき》の類、繪の具の類を造《つく》りし證跡《せうせき》有り。(第六回、打製類の條《くだり》及び第八回、貝殼器の條を見よ。)繪具の原料と思《おも》はるる赤色《あかいろ》物質の塊《かたま》り、及び之を打ち碎《くだ》くに用ゐしならんと考へらるる扁平石《へんぺいせき》(縁《ゑん》部に赤色料付着す)は遺跡《いせき》より發見《はつけん》されし事有るなり。コロボックルは又|丸木舟《まるきふね》を始として種々《しゆ/\》の木具をも製作《せいさく》せしならん。
    ○美術
磨製石斧《ませいいしおの》の中には石材の撰擇《せんたく》、形状の意匠《いせう》、明かに美術思想《びじゆつしそう》の發達《はつたつ》を示すもの有り、石鏃《せきぞく》中にも亦實用のみを目的《もくてき》とせずして色《いろ》と云《い》[#ルビの「い」は底本では「いヽ」]ひ形《かたち》と云ひ實《じつ》に美を
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