土偶と呼ぶ)
(第四)はがき位の大さにて札形のもの。(之を土版と呼ぶ)
此他、用法も詳《つまびらか》ならず、分類も爲し難きもの數品有り。
製法は何れも手づくね素燒《すや》きなり。土質中には多少《たせう》の雲母《きらら》を含《ふく》むを常とす。
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    ●容器
容器には種々の形有り。一々《いち/\》名状《めいじやう》すべからず。大は口徑一尺餘。小は口徑一寸許り。高《たか》さ厚《あつ》さ亦區々なり。圖版中右の上に畫く所は形状《けいじやう》を主《しゆ》とす、大小の比例は必しも眞の如くならず。色は黒色栗色鳶色カハラケ色等種々有りて表面の精粗《せいそ》も一定《いつてい》せず、製法は圖版中左の下に畫きたるが如し。先づ底面を作り其上に紐形にしたる土を乘せ、周圍《しうゐ》に添《そ》ふて之を段々に螺旋状に積《つ》み上げ、内外兩面を滑《なめら》かに擦《す》りて全形を仕上げ、後種々の裝飾を施《ほどこ》して火《ひ》に掛《か》けたるならん。此順序は遺跡發見物中に存在する造《つく》り掛《か》けの土噐を比較《ひかう》して明かに知るを得るなり。土噐の底面には網代の痕又は木の葉の痕を存するものあり。是製造の始|敷《し》き物《もの》として用ゐたる編み物或は木の葉が偶然此所に印せられしに他ならず。裝飾《そうしよく》には摸樣《もやう》と彩色《さいしき》との二種有り。摸樣は燒く前に施し、彩色は燒きたる後《のち》に施《ほどこ》せしなり。摸樣は種類甚多しと雖も大別して沈紋《ちんもん》浮紋《ふもん》の二とするを得、沈紋《ちんもん》とは土器の面より凹《くぼ》みて付《つ》きたる摸樣《もやう》にして、浮紋とは土器の面上に他の土塊を添へて作りたるものの謂なり。沈紋の中に又|押紋《をうもん》畫紋《ぐわもん》の別有り。布《ぬの》、席《むしろ》、編み物、紐細き棒の小口、貝殼《かひがら》等を押《お》し付《つ》けて印したる紋を押紋と云ひ、細き棒或は篦《へら》を以て畫《ゑが》きたる摸樣を畫紋と云ふ。是等諸種の摸樣は通例《つうれい》彼此《ひが》[#「彼此《ひが》」はママ]相《あい》混《こん》じて施され居るなり。彩色には總塗《そうぬ》り有《あ》り、畫紋有り、兩種を合算するも其數甚少し。色は何れも赤なれど其内に四五種の別有り。(繪具の事に付きては別に記す所あるべし)
容器の用は必しも飮食品《いんしよくひん》を貯《
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